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セキュリティナレッジ

2026.05.18

内部不正対策の進め方|原因と事例、4つの対策ポイント

内部不正は、正規のアクセス権限を持つ内部者によって行われるため外部攻撃よりも検知が難しく、企業にとって深刻なセキュリティリスクとなっています。情報漏えいやデータ改ざんといった不正行為は、ひとたび発生すれば、事業の信頼性や継続性に重大な影響を及ぼします。さらに、リモートワークやクラウド活用が拡大する現代では、従業員による情報持ち出しや不正利用のリスクが一層高まっています。
本記事では、内部不正の定義や原因、組織に与える影響を整理したうえで、どのような対策を講じるべきかをIPA(情報処理推進機構)のガイドラインに基づいて解説します。

内部不正対策の出発点:内部不正とは何か?

効果的な対策を講じるためには、まず内部不正の定義と対象範囲を正しく理解する必要があります。

内部不正の定義と対象範囲

内部不正とは、組織の内部者がその立場や権限を悪用し、組織に損害を与える行為を指します。

IPA(情報処理推進機構)の「組織における内部不正防止ガイドライン第5版」では、内部不正を「従業員、元従業員、派遣社員、取引先といった組織内部の者、または組織内部の者であった者が、正規のアクセス権限を不正に利用または窃取し、組織の情報を持ち出す等の行為」と定義しています。

「内部者」には、正社員だけでなく、契約社員、派遣社員、退職者、業務委託先など、情報資産にアクセス可能なすべての人物が含まれます。
特に退職予定者については、営業秘密や顧客情報の持ち出しリスクが高まる可能性があるため、情報の取り扱いには特別な注意が必要とされています。正規の権限を持つ内部者による行為は外部攻撃よりも検知が難しく、これが対策の難しさにつながっています。

参考:組織における内部不正防止ガイドライン(第5版)|独立行政法人 情報処理推進機構

代表的な内部不正の種類

情報漏えい

最も頻繁に発生する内部不正です。顧客の個人情報や取引先情報、営業秘密、技術情報などを持ち出し、競合他社へ売却したり、自身の転職先で不当に利用したりします。
特に、顧客の個人情報が流出した場合は、法律に基づく報告・対応義務が生じます(3-1参照)。
また、「不正競争防止法」が定める「営業秘密」に該当する情報の持ち出しは、後述(1-3)の通り、極めて高い法的リスクを伴います。

データ改ざん

業務データや財務データを不正に書き換える行為です。横領の隠蔽や、組織の業績を不当に高く見せる(偽装する)などの目的で行われます。

横領・不正利用

金銭や物品の窃取、経費の不正計上、業務システムの私的利用など、組織の資産を私的利益のために不正に使用・取得する行為です。
直接的な窃取に限らず、アクセス権の濫用や、組織の情報・資産を第三者へ不正に提供する行為も含まれます。権限を持つ立場を悪用しやすいことから、管理職や情報システム担当者による不正が発覚するケースも少なくありません。

特に注意すべき「営業秘密の侵害」

営業秘密の持ち出しは情報漏えいの一種ですが、不正競争防止法上で特別な保護対象となっているため、内部不正対策においては明確に区別して理解する必要があります。
不正競争防止法では、以下の3つの要件すべてを満たす情報を「営業秘密」と定義しています。

  • 秘密管理性:秘密として管理されていること
  • 有用性:生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上または営業上の情報であること
  • 非公知性:公然と知られていないもの

代表例としては、製品の設計図、顧客リスト、販売戦略などが挙げられます。
なお、営業秘密の侵害は単なる「持ち出し」にとどまりません。転職先での「使用」や第三者への「開示」も対象となります。これらの行為によって情報が競合他社へ流出した場合、加害者は差止請求や損害賠償請求の対象となる可能性があります。
また、営業秘密が流出すれば、競争優位の回復は極めて困難となり、経営に深刻な影響を及ぼします。

内部不正はなぜ起きるのか?不正のトライアングル

内部不正を防止するには、「なぜ起きるのか」という構造的要因を理解することが重要です。その枠組みとして広く知られているのが「不正のトライアングル」です。

不正のトライアングルとは?

米国の犯罪学者ドナルド・R・クレッシーが提唱した理論で、不正は以下の3要素が重なったときに成立しやすくなるとされています。

  • 動機・プレッシャー
  • 機会
  • 正当化

3要素のどれか一つでも欠けると不正の実行に至りにくくなるため、内部不正対策においては、このいずれかを抑制する取り組みが重要とされています。

この考え方は、IPAのガイドラインにおいても、内部不正対策の基本として採用されています。

不正を引き起こす3つの要素

動機・プレッシャー

不正を働く理由となる要素です。経済的な困窮、業績への過度なプレッシャー、人事評価への不満、組織への恨みなどが該当します。
たとえば、営業目標を達成できず叱責を受け続けた従業員が顧客データを持ち出して転職するケースが挙げられます。

機会

不正を実行できる環境が整っている状態を指します。アクセス権限の管理やログ監視が不十分である、内部統制が機能していないといった状況では、不正が発生しやすくなります。
たとえば、退職予定の従業員が重要システムへのアクセス権を保持したままになっているケースが該当します。

正当化

自らの不正行為を心理的に正当化する思考プロセスを指します。「会社は自分を正当に評価していない」「これくらいは自分の権利だ」といった理屈をつけることで、罪悪感を軽減します。
たとえば、長年貢献してきたにもかかわらず昇進や賞与で報われなかったと感じている従業員が、「この情報は自分が作ったも同然だ」と自らに言い聞かせながら顧客リストを持ち出すケースが典型例です。

内部不正が引き起こす影響と事例

内部不正は、組織の事業継続や社会的信用に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

内部不正が組織に与える影響

事業への影響

直接的な経済的損失に加え、調査費用やシステム改修費用など、膨大な間接コストが発生します。顧客情報の流出は多額の損害賠償を招き、営業秘密の流出は市場シェアの喪失に直結します。

社会的信用への影響

顧客や取引先からの信頼失墜は、取引停止や契約解除を招き、ブランド価値が大きく損なわれます。また、メディア報道による企業イメージの悪化は、回復に長い時間を要します。

法的リスクへの影響

個人情報保護法や不正競争防止法違反による行政処分を受ける可能性があります。また、企業名が公表されることで社会的制裁を受け、採用活動や株価にも悪影響が及びます。
なお、個人情報が流出した場合は、個人情報保護法に基づき、「個人情報保護委員会への報告」および「本人への通知」が法的義務として課せられます。これらを怠った場合、改善命令や罰則の対象となるだけでなく、隠蔽工作とみなされ社会的信用をさらに失うリスクがある点に注意が必要です。

実際の事例から見る内部不正のパターン

大手飲食チェーンにおける営業秘密の持ち出し

経営幹部が、前職の競合企業から仕入れ値や原価などの営業秘密を不当に持ち出し、転職先で活用した事件です。退職前に業務用PCからデータをダウンロードしていたことが判明し、不正競争防止法違反で有罪判決が確定しました。
退職直前の権限悪用を検知できなかった点が問題視され、退職予定者のアクセス管理とログ監視の重要性を改めて浮き彫りにした事例です。

大手通信会社グループにおける大規模顧客情報の流出

業務委託先の元派遣社員が、約900万件の顧客情報を不正に持ち出し、名簿業者に売却していた事件です。不正行為が最大約10年にわたり継続しており、自治体や民間企業を含む多数の顧客に影響が及びました。
委託先・派遣社員に対する監視体制の不備が原因とされており、外部委託先を含めた内部者管理の重要性を示す事例となりました。
事態の深刻さから経営トップの引責辞任にまで発展し、内部不正が組織の経営そのものを揺るがすリスクを示した事件として広く知られています。

大手保険会社における出向者による情報持ち出し

大手保険会社から出向していた社員が、出向先の複数の取引先企業から不適切な手段で顧客情報を取得していた事件です。関係企業は7社にのぼり、取得された情報は600件超と報じられています。
出向者という立場を利用し、複数の組織にまたがって情報収集が行われた点が特徴であり、組織の境界を越えた内部者管理の難しさを示す事例といえます。
本件では、情報の取得・管理に関する社内ルールの徹底不足に加え、出向者に対するガバナンスの不備が問題視されました。委託先や出向者を含む広義の「内部者」全体を対象とした対策の重要性を改めて示しています。

内部不正対策:まず着手すべき4つのポイント

内部不正対策は、「何を守るか」を明確に定めた上で、組織的対策と技術的対策を両輪で進めることが大切です。ここでは、「不正のトライアングル」の考え方を踏まえながら、IPAのガイドラインが推奨する基本的な対策を解説します。

1. 保護すべき情報資産の特定と分類

対策の出発点は、組織が保有する情報資産を棚卸しし、機密度に応じて分類・管理することです。「何を守るか」が不明確なままでは、どんな高度な対策も機能しません。

データの種類、保管場所、アクセス権限の現状を把握し、顧客情報・技術情報・財務情報などを分類した上で、適切な保護ルールを策定します。
この「情報資産の見える化」が、後述する技術的対策(アクセス管理や行動分析)を有効にするための絶対条件となります。

2. 職務分掌・内部統制・通報制度の整備

組織的対策の基本は、職務の分離と相互チェックの仕組みづくりです。これにより、不正の「機会」を物理的に減らし、発見のリスクを高めることで「正当化」を困難にします。

職務分掌の明確化

業務担当と権限を明確に定義し、重要なプロセスにおいて実行者と承認者を分離することで、単独での不正完結を防止します。

相互牽制と通報制度

複数人による業務チェックや定期的なジョブローテーションを導入します。
また、匿名で報告できる内部通報制度を整備し、窓口を社外の第三者機関にも設置することが大切です。

3. アクセス権・特権ID管理とログ監視の設計

技術的対策の中心は、誰が何にアクセスできるかを厳格に管理し、その記録を残すことです。これらの対策は、不正の「機会」を直接的に減らすとともに、「正当化」の心理的ハードルを上げる効果もあります。

アクセス権限の最小化

業務上必要最小限の権限のみを付与する「最小権限の原則」が基本です。退職予定者や異動者については、業務上の必要性がなくなった時点で、速やかに権限を削除します。

特権ID管理とログ監視

システム管理者などの強力な「特権ID」は個人に紐付けて厳格に管理し、追跡を可能にします。
また、ログ監視においては、不自然な大量ダウンロードや不審なアクセスを自動検知する仕組みの構築が不可欠です。

4. 教育・ポリシー・運用手順の継続改善

技術的対策や組織的対策がどれほど充実していても、従業員の意識が伴わなければ効果は限定的です。継続的な教育とポリシーの浸透は、不正の「正当化」を防止するうえで重要な役割を果たします。

セキュリティ教育とポリシー整備

入社時だけでなく、定期的な研修を通じて、内部不正のリスクや組織の方針・ルールを従業員に周知します。
あわせて、情報セキュリティポリシー、情報資産管理規程、罰則規定などを明文化し、組織全体に徹底することが必要です。

運用手順の継続改善

対策を形骸化させないために、定期的な評価と見直しを実施します。
内部不正の手口や脅威は常に変化するため、対策の有効性を継続的に検証し、必要に応じて改善していくことが重要です。


上記に加えて、適切な人事評価や職場環境の改善を通じて、不正の「動機・プレッシャー」そのものを軽減することも重要です。
また、「情報漏えいを起点とした内部不正対策」は、現場任せにするのではなく、経営課題として位置づけるべきテーマです。経営層がリーダーシップを発揮し、必要な予算と人員を確保したうえで、全社的な取り組みとして推進することが不可欠です。

内部不正対策を支える「データの可視化」

組織的・技術的対策を効果的に機能させるには、「機密データの所在を把握・分類する」「大量のログから異常な兆候を検知する」という2つの課題を解決する必要があります。
まずはデータを可視化することで、正確な分類が可能になり、その分類があって初めてアクセス管理や監視が実効性を持ちます。

なぜ「データの可視化」が重要なのか?

データは、クラウド、オンプレミス、SaaS環境など多様な場所に分散しています。特に非構造化データ(文書、ログ、メッセージなど)は所在の把握が難しく、管理の盲点になりやすい領域です。
機密データの所在が不明確なままアクセス権限の設定やログ監視を行っても、十分な効果は期待できません。まず「どこに何があるのか」を把握することが前提となります。

また、退職予定の従業員が大量のファイルをダウンロードするといった異常行動を、人手のみで継続的に監視することは現実的ではありません。

これらの課題に対応する有効なアプローチが、データの所在を可視化する「DSPM(Data Security Posture Management、データセキュリティ体制管理)」と、従業員の行動を分析する「Insider Risk Management(インサイダーリスク管理)」です。

MBSDの「Microsoft Purview Utilization Service」

Microsoft Purviewの「Insider Risk Management」機能は、従業員の行動パターンを分析し、内部不正の兆候を自動的に検知します。

たとえば、退職予定の従業員が大量のファイルをダウンロードするといった異常な行動を検知すると、セキュリティ担当者へアラートを通知します。
通常時は従業員の行動を匿名化して分析し、リスクが検知された場合にのみ詳細を確認できる仕組みとなっており、プライバシーに配慮した設計となっています。

三井物産セキュアディレクション(MBSD)は、「Microsoft Purview Utilization Service」を通じて、その導入から運用までを包括的に支援します。

現状分析、導入支援、アラート監視、ルール設計・チューニング、運用設計、インシデント対応という6つのステップで、内部不正リスクの"見える化"から対応までをサポートします。

資料ダウンロードはこちら

なお、Microsoft Purviewは情報漏えい対策をはじめ、組織のデータを横断的に管理・統制するためのデータ管理基盤です。
データ改ざんや横領・不正利用については、4-2で解説した職務分掌や内部統制といった組織的対策での対応が中心となります。

MBSDの「データセキュリティ(DSPM)導入支援サービス」

DSPMは、組織のデータセキュリティの現状を把握・評価し、改善するためのアプローチです。特に非構造化データの管理においては、「Data Classification(ファイル分類とラベリング)の確立」がDSPM実現における大きな障壁とされています。

MBSDは、「データセキュリティ(DSPM)導入支援サービス」を通じて、現状分析・規程策定、保護対象データの棚卸し支援、運用ルール設計から監視運用支援(MBSD SOC)まで包括的に支援し、この障壁の解決をお手伝いします。

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まとめ

内部不正対策は、組織にとって避けて通れない経営課題です。
効果的な対策は、まず情報資産の特定と分類により「何を守るのか」を明確にすることから始まります。そのうえで、不正のトライアングルである「動機・プレッシャー」「機会」「正当化」それぞれへのアプローチとして、職務分掌や内部統制の整備、アクセス権限管理とログ監視、継続的な教育とポリシー浸透を包括的に実施することが求められます。

しかし、これらの対策を講じたとしても、大量のログから異常な兆候を検知し、機密データの所在を継続的に把握することは容易ではありません。
三井物産セキュアディレクション(MBSD)は、データ分類によって機密データの所在を可視化する「データセキュリティ(DSPM)導入支援サービス」と、従業員の行動を分析し内部不正の兆候を検知する「Microsoft Purview Utilization Service」を通じて、現状分析から導入、運用、インシデント対応までをトータルでサポートします。
20年以上のセキュリティ実績と、国内トップレベルのホワイトハッカー集団の知見を活かし、最適な内部不正対策をお手伝いします。ぜひお気軽にご相談ください。

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