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サイバー攻撃の被害が深刻化する中、CSIRT(Computer Security Incident Response Team)の導入を検討する企業が増えています。
CSIRTは、セキュリティインシデントに迅速かつ的確に対応する専門組織であり、企業の重要なセキュリティ体制の一つです。
しかし中には「そもそもCSIRTとは何か」「なぜ必要なのか」「社内構築と外部委託のどちらを選ぶべきか」といった疑問を持つ人もいるのではないでしょうか。
本記事では、CSIRTの基本的な定義や役割から、導入判断のポイント、構築・運用時の課題と解決策まで、実務的な視点でわかりやすく解説します。
CSIRTとは?基本の定義と役割
企業のセキュリティ対策を検討するうえで、CSIRTの正確な理解は欠かせません。ここでは、定義・必要性・類似組織との違いを整理します。
CSIRTの定義と目的
CSIRT(Computer Security Incident Response Team)とは、コンピュータセキュリティ関連のインシデント(事故・事件)に対応する専門チームを指します。
日本語では「セキュリティインシデント対応チーム」と訳され、「シーサート」と読みます。
主な目的は、サイバー攻撃やシステム障害といったインシデント発生時に、迅速かつ適切な対応を行うことです。
具体的には、検知・分析・封じ込め・復旧・再発防止までの一連の対応を担います。
近年では、事後対応にとどまらず、平常時の脅威情報収集や予防策の検討、社内教育も重要な役割となっています。
どんな企業にCSIRTが必要か?
CSIRTの導入がとくに重要とされるのは、機密情報や個人情報を大量に扱う企業(金融機関、医療機関、通信事業者など)や、システム停止が事業に直結する企業(製造業、ECサイトなど)です。
導入は主に従業員300名以上の中堅〜大企業で進んでいますが、サプライチェーン攻撃の対象になりやすい中小企業でも関心が高まっています。
このように、従来は大企業中心だったCSIRT導入も、デジタル化の進展により中小企業にまで必要性が広がりつつあります。
CSIRTとSOCの違いと連携の重要性
CSIRTと混同されやすいのがSOC(Security Operation Center)です。
SOCは主に「監視」を担当し、ネットワークやシステムを常時監視して脅威を検知・分析します。
一方CSIRTは「対応」を担い、インシデント発生時の初動対応から復旧までを統括します。
両者は相互補完関係にあり、SOCが脅威を検知し、CSIRTが対応することで、包括的なセキュリティ運用が可能となります。
多くの企業ではSOCとCSIRTを一体運用し、平常時の監視から緊急時対応まで切れ目のない体制を構築しています。
SOCについては以下の記事で詳しく解説しています。
SOCとは?セキュリティ運用の仕組みと導入形態をわかりやすく解説
なぜCSIRT導入が重要なのか?背景と課題
企業を取り巻くセキュリティ環境の変化により、CSIRTへの関心は急速に高まっています。
その背景を見ていきましょう。
サイバー攻撃の高度化・巧妙化
近年のサイバー攻撃は、従来の境界防御型セキュリティでは防ぎきれないレベルまで高度化しています。
ランサムウェア攻撃ではデータ暗号化に加え、事前に機密データを窃取し、支払い拒否時に暴露をちらつかせる「二重恐喝」が主流です。
また、標的型攻撃では、長期間ネットワークに潜伏し、権限を段階的に拡大する「APT攻撃(特定の個人や組織を狙った継続的なサイバー攻撃)」が増加しています。
こうした攻撃は既存のセキュリティ製品による検知が難しく、気付いた時点で被害が広範囲に及んでいる場合が多いのが特徴です。
そのため、「攻撃を100%防ぐことは不可能」という前提で迅速に対応できるCSIRTの重要性が高まっています。
法規制・コンプライアンス要求の強化
法制度面でも、CSIRTの必要性を後押しする変化が続いています。
2022年施行の改正個人情報保護法では、個人データ漏えい時の個人情報保護委員会への報告が「知った時から72時間以内」に義務化され、迅速な事実確認と影響範囲の特定が不可欠となっています。
金融業界では金融庁がサイバーセキュリティ体制の強化を要求し、その他の業界でもガイドラインによってCSIRT設置が推奨されています。
さらに、取引先や監査法人からのセキュリティ要件も厳格化しており、CSIRTの有無が契約や評価に影響する可能性もあります。
CSIRT運用の選択肢|完全内製or外部パートナー活用
CSIRTは自組織の業務特性を理解し、機密情報を適切に管理しながら迅速な対応を行う必要があるため原則として組織内に設置しますが、運用方法には複数の選択肢があります。
完全内製で行うか、外部パートナーを活用するかを適切に判断し、自組織に最適な体制を構築しましょう。
完全内製で運用するメリットと課題
CSIRTを完全に内製する最大のメリットは、自組織業務やシステムに精通したメンバーによるきめ細かな対応ができる点です。
影響範囲の特定や復旧優先度の判断も迅速かつ適切に行えます。
また、機密情報を外部に開示しないため、情報管理面での安心感もあります。
一方、完全内製の課題は、セキュリティ専門人材の確保と育成の難しさです。
CSIRTメンバーには技術力だけでなく、対応経験やコミュニケーション能力など幅広いスキルが求められますが、そのような人材は市場で慢性的に不足しています。
さらに、脅威は日々進化するため、専門知識のアップデートと情報収集が継続的に必要となります。
外部パートナーを活用するメリットと課題
メリット①:高度な分析力と専門性が活用できる
セキュリティの専門家による即時の支援が受けられることは、外部パートナーを活用する大きな利点です。
セキュリティ専門企業は、さまざまな業界や規模の企業でインシデント対応を行ってきた実績があり、最新の脅威情報や対策技術についても常にアップデートされた状態を維持しています。
そのため、自組織内に十分な人材や知識がない場合でも、高度な対応力を迅速に確保することが可能です。
メリット②:専門企業による包括的サポートが受けられる
多くのセキュリティ専門企業では、CSIRT体制によるインシデント対応に加え、SOCによる監視機能も提供しています。
これにより、監視から対応までをシームレスにつなげた、包括的で効率的なセキュリティ運用を実現できます。
課題:外部依存によるリスクがある
上記のメリットがある一方で、外部パートナーに依存しすぎると、自組織内にセキュリティの知見が蓄積されにくくなるという課題があります。
そのため、導入にあたっては、外部と内部の役割分担や責任範囲を事前に明確に定め、バランスの取れた体制を構築することが重要です。
CSIRT導入・運用のポイント
CSIRTの導入・運用においては、事前の準備段階から継続的な運用まで、それぞれのフェーズで押さえるべきポイントがあります。
CSIRT導入時の3つの検討事項
CSIRT導入時に重要なのは、「何から始めるべきか」を明確にすることです。
以下の3つのポイントをしっかり検討しておくことで、スムーズな導入が可能になります。
- 現状のセキュリティ体制評価
まず、現状のセキュリティ体制を棚卸しします。
具体的には、既存のセキュリティツールの導入状況、インシデント対応手順の有無、担当者のスキルレベルなどを客観的に評価し、強化が必要な部分を洗い出します。 - 経営層への予算確保と説明
次に検討するべきなのが予算の確保です。
CSIRTの効果は平常時には見えにくいため、経営層の理解を得るのは容易ではありません。
説得力を高めるには、業界における情報漏えい事例や、その際に発生した損失額を具体的に提示し、リスク回避の観点から投資対効果を説明することが有効です。 - 部門間の連携体制構築
CSIRTの活動はIT部門だけでは完結しません。
総務・法務・広報など、関係部門との役割分担や連絡体制を事前に明確化しておくことで、インシデント発生時の迅速かつ的確な対応が可能になります。
CSIRTを継続的に運用するための3つのポイント
CSIRT導入後の継続的な運用では、チームの対応力向上と外部との連携強化が重要です。
効果的なCSIRT運用のために、以下のポイントを押さえておきましょう。
- 定期的な訓練と習熟度向上
インシデント対応スキルは、理論的な学習だけでは十分に身につきません。
シナリオベースの模擬訓練を定期的に行うことで、チーム全体の習熟度を高める必要があります。
これにより、実際の事案発生時にも落ち着いて対応できる体制が整います。 - SOCとの効果的な連携体制
SOCからのアラート情報を適切に優先順位付け(トリアージ)し、真に対応が必要なインシデントを迅速に特定できる仕組みを構築します。
SOCの監視機能とCSIRTの対応機能が円滑に連携することで、無駄のない効率的な運用が実現します。 - 外部専門機関との連携強化
業界のCSIRT組織やJPCERTコーディネーションセンターといった公的機関との情報共有体制を構築し、最新の脅威情報や対策技術を入手できるルートを確保することが重要です。
また、セキュリティインシデントが発生した際には、端末やネットワークから詳細な情報を収集し、被害状況の把握や原因の特定を行うインシデントレスポンス対応(デジタルフォレンジック調査、マルウェア解析など)が求められます。
これらの対応には高度な専門技術を要するため、複雑な状況下では、セキュリティ専門企業の支援を受けることで、CSIRTの対応力を効果的に補完し、迅速かつ正確な対応判断につなげることが可能です。
三井物産セキュアディレクション(MBSD)では、インシデントの初動対応から技術的調査までを一貫支援するインシデントレスポンス支援サービスをご提供しており、外部パートナーとして多くの企業をサポートしています。
CSIRTを強化する外部サポートを検討の際は、ぜひご相談ください。
まとめ
CSIRTは、サイバー攻撃の高度化や法規制の強化を背景に、現代企業にとって欠かせないセキュリティ体制となっています。
SOCとの役割の違いを理解し、監視機能と対応機能を連携させた包括的な運用体制を構築することが重要です。
導入にあたっては、完全内製と外部パートナー活用の特性を踏まえ、自組織に最適な運用方法を選択しましょう。
MBSDでは、CSIRT体制の構築支援から運用フェーズの継続支援まで、CSIRTの立ち上げ・強化を幅広くサポートしています。
また、SOC構築支援に加え、ASOC(Advanced SOC)やMBSD -SOC (MBSD Managed Security Service)を通じて24時間365日の監視体制を提供し、CSIRTの対応力と連携した包括的なセキュリティ運用を実現します。
さらに、有事のセキュリティインシデントにおいて、初動対応から技術的調査までを一貫して支援する「インシデントレスポンス支援サービス」もご用意しております。
CSIRT体制の構築・運用、そしてSOC導入を含めたセキュリティ強化をご検討の際は、ぜひ一度ご相談ください。
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