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ゼロトラスト

ゼロトラストとは

ゼロトラスト(Zero Trust)は、現代のサイバーセキュリティの基本概念の一つであり、従来の境界防御型セキュリティとは異なるアプローチを取ります。これは、ネットワーク内部の環境を「安全」と仮定せず、すべてのアクセスを検証し続けることでセキュリティを確保するモデルです。

背景と必要性

従来のセキュリティ対策は「境界防御型」と呼ばれ、社内ネットワークと社外ネットワークの間にファイアウォールなどを設置し、社内を安全な領域とみなしていました。しかし、以下の要因により、このモデルではセキュリティリスクが増大しました。
● クラウドサービスの普及 - 企業データがクラウドに移行し、社内ネットワークの境界が曖昧になった。
● リモートワークの拡大 - 社員が社外から企業システムへアクセスする機会が増え、ネットワーク外からのアクセスが常態化した。
● 高度化するサイバー攻撃 - 内部からの攻撃や、外部から侵入した攻撃者による「内部攻撃」が増えた。
こうした背景から、「ネットワーク内部であっても安全とは限らない」という考え方が生まれ、ゼロトラストの必要性が高まりました。

ゼロトラストの基本原則

ゼロトラストは「誰も、何も信頼しない(Never Trust, Always Verify)」という前提のもと、以下のような基本原則に基づいています。
● 明示的な検証(Explicit Verification) - すべてのアクセスは認証・認可を経て検証される。
● 最小特権の原則(Least Privilege) - 必要最小限のアクセス権のみを付与する。
● 継続的な監視とログ管理 - ユーザーの行動やネットワーク内のトラフィックを常に監視し、異常を検知する。
● マイクロセグメンテーション - ネットワークを細かく分割し、異なるセグメント間の移動を制限する。
● デバイスのセキュリティ状態の評価 - アクセスを許可する前に、デバイスのコンプライアンスチェックを実施。

ゼロトラストの構成要素

ゼロトラストアーキテクチャ(ZTA)を実現するためには、以下の技術や仕組みが活用されます。
● 多要素認証(MFA) - パスワードだけでなく、追加の認証要素(生体認証、ワンタイムパスワードなど)を要求。
● アイデンティティ管理(IAM) - すべてのユーザーとデバイスの識別と管理。
● エンドポイントセキュリティ - 各デバイスのセキュリティ状況を評価し、不審なデバイスのアクセスをブロック。
● ネットワーク監視 - アクセスログをリアルタイムで分析し、不審な挙動を検知。
● データ暗号化 - 送受信データや保存データを暗号化し、万が一の漏洩を防止。

コンテキストベースのアクセス制御

コンテキストベースのアクセス制御(Context-based Access Control, CBAC)は、単なるユーザーのID認証だけでなく、アクセスの状況や環境を考慮した動的なアクセス管理の手法です。具体的には、以下の要素を基にアクセスの可否を決定します。
● 場所(Location) - どの国・地域・ネットワークからアクセスしているのか。
● デバイス(Device) - アクセスに使用しているデバイスが登録され、適切なセキュリティ設定が施されているか。
● 時間(Time) - アクセスを試みた時間帯が通常の業務時間内か。
● 行動パターン(Behavior) - これまでのアクセス履歴と比較して異常な行動がないか。
● リスクスコア(Risk Score) - AIや機械学習を活用し、総合的なリスク評価を基にアクセス許可を決定。
例えば、社員が普段と異なる国からログインを試みた場合、追加の認証を要求するか、アクセスをブロックすることができます。このように、動的にリスクを評価し、柔軟にアクセス管理を行うことで、より強固なセキュリティを確保できます。

ゼロトラストの導入ステップ

企業がゼロトラストを導入する際には、以下の手順を踏むことが推奨されます。
● 資産の可視化 - どのデータ、アプリケーション、デバイスがネットワーク上に存在するかを把握する。
● アクセス制御の定義 - 各ユーザーやデバイスがアクセスできる範囲を厳密に設定する。
● 認証・認可の強化 - 多要素認証やコンテキストベースのアクセス制御を導入。
● トラフィックの監視と分析 - ネットワーク内外のトラフィックを監視し、異常を検知する仕組みを構築。
● 継続的な最適化 - 定期的にセキュリティポリシーを見直し、最新の脅威に対応できるようにする。

まとめ

ゼロトラストは、従来の境界防御型セキュリティの限界を克服し、クラウド時代やリモートワーク環境に適した強固なセキュリティモデルです。企業がゼロトラストを導入することで、データの安全性を確保し、より堅牢なIT環境を構築することができます。サイバーセキュリティ対策において、ゼロトラストの考え方は不可欠になっています。