本サイトは、快適にご利用いただくためにクッキー(Cookie)を使用しております。
Cookieの使用に同意いただける場合は「同意する」ボタンを押してください。
なお本サイトのCookie使用については、「個人情報保護方針」をご覧ください。
TLPT
TLPT(脅威ベースペネトレーションテスト)とは
TLPT(Threat-Led Penetration Testing、脅威ベースペネトレーションテスト)は、実際のサイバー攻撃を想定し、攻撃者が用いる手法(TTPs:Tactics, Techniques, and Procedures)を再現することで、組織の防御能力を評価するテストです。通常のペネトレーションテストとは異なり、最新の脅威インテリジェンスを活用し、より現実的な攻撃シナリオを策定する点が特徴です。
近年、サイバー攻撃の高度化が進み、標的型攻撃(APT)やランサムウェアなどの脅威が増加しています。従来の脆弱性診断では十分に対応できないケースが増えており、より実践的なセキュリティ評価手法としてTLPTが注目されています。セキュリティを強化するために、金融機関をはじめ、官公庁や一般企業においても導入が進んでいます。
TLPTの目的と必要性
TLPTの目的は、実際の攻撃シナリオを再現し、組織のセキュリティ対策が有効かどうかを検証することです。特に金融機関、政府機関、重要インフラ事業者などは、個人情報・財務データ・国家機密など、攻撃者にとって魅力的なデータを保有しているため、TLPTの実施が推奨されています。
また、TLPTは単なるシステムの脆弱性診断ではなく、組織全体のセキュリティ運用体制の強化にも寄与します。具体的には、SOC(Security Operation Center)の検知能力やCSIRT(Computer Security Incident Response Team)の対応能力を評価し、セキュリティインシデントに対する組織全体の即応力を高めることができます。
さらに、近年では規制当局によるセキュリティ監査の一環としてTLPTの実施が求められるケースが増えています。例えば、欧州のTIBER-EUや英国のCBESTでは、金融機関に対しTLPTの実施が義務化されています。日本でも、金融情報システムセンター(FISC)がTLPTの実施を推奨しており、今後さらなる普及が見込まれます。
TLPTの実施プロセス
TLPTは、計画的かつ戦略的に実施する必要があり、主に以下の4つのフェーズで構成されます。
● 事前準備(脅威インテリジェンスの収集とシナリオ策定)
- インターネット上に公開された情報(OSINT)やダークウェブ、SNSなどの脅威インテリジェンスを活用し、組織が直面しうる脅威を特定
● テスト実施(例えば以下の攻撃をシミュレーション)
- フィッシング攻撃による認証情報の窃取
- ネットワークの脆弱性を利用したシステム侵入
- 管理者権限の奪取
- 内部ネットワーク内での横展開(Lateral Movement)
● 結果分析と報告(脆弱性の評価と改善提案)
- 成功した攻撃と失敗した攻撃を分析し、具体的な改善策を提案
● フィードバックと継続的な強化
- 結果を基にセキュリティ対策を改善し、組織の防御力を向上
TLPTの実施に必要なチーム構成
TLPTの成功には、以下のチームが必要です。
● Red Team(攻撃者役):実際の攻撃者になりきり、最新の攻撃手法を用いて組織のセキュリティを突破する役割を担う。標的型攻撃、脆弱性の悪用、内部ネットワークの横展開などを試み、防御の弱点を特定
● Blue Team(防御者役):組織の防御側として、Red Teamの攻撃を検知・対応する。SOCやCSIRTが中心となり、ログ監視、インシデントレスポンス、システム強化を行い、セキュリティ態勢を維持する
● White Team:Red TeamとBlue Teamの橋渡しを行い、攻撃と防御の結果を分析し、組織全体のセキュリティを強化する。
社内に専任チームを構築する場合もありますが、特殊な知識が必要となるため、外部の専門機関を活用する場合が多いです。
TLPT実施時の注意点
TLPTを実施する際には以下の点に注意する必要があります。
● テスト範囲の明確化と事前合意
● 対象システムや攻撃手法を明確にし、関係者の承認を得る
● 法的および倫理的な側面の考慮
● 経営層の承認、規制遵守、従業員のプライバシー保護
● ビジネス継続性(BCP)への配慮
● テスト中の業務影響を最小限に抑える計画
● テスト結果の適切な管理と改善策の実施
● 防御能力向上のための具体的な改善施策を策定
TLPTの今後
近年、金融機関だけでなく、官公庁や重要インフラ企業など幅広い業界でTLPTの実施が進んでいます。特にAIを活用した攻撃の高度化に伴い、TLPTの実施手法も進化しています。今後は、AIによる自動攻撃検知や、クラウド環境に対応したTLPT手法の確立も求められます。TLPTは単なるセキュリティ評価ではなく、組織の防御力を実際の攻撃に耐えうるレベルにまで引き上げるための不可欠な手法として、重要性を増していくと考えられます。