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静的解析と動的解析

静的解析と動的解析とは

サイバーセキュリティの現場では、プログラムやマルウェアの挙動を正しく理解し、リスクを見極めることが重要です。そのために用いられる基本的な手法が「静的解析 (SA: Static Analysis)」と「動的解析 (DA: Dynamic Analysis)」です。この2つは対になる概念であり、それぞれ異なるアプローチから対象を評価します。

静的解析とは

静的解析は、ソフトウェアやマルウェアなどを実行することなく、ソースコードやバイナリ(実行ファイル)の内容を解析する手法です。一般的には以下のような方法が用いられます。
●ソースコードレビュー
●コンパイル済みファイルの逆アセンブル、逆コンパイル
●SAST(Static Application Security Testing)ツールによる脆弱性診断

静的解析のメリット

●システムに影響を与えずに安全に実施可能
●コードレベルでのバグや脆弱性を早期に発見できる
●ソフトウェア開発工程の早期段階(Shift Left)で活用される

静的解析のデメリット

●難読化されたコードやパックされたマルウェアには不向き
●実行時に依存する挙動(外部通信や環境依存処理など)の検知が困難
●誤検知が多く、対応に工数がかかる場合もある

動的解析とは

動的解析は、ソフトウェアやマルウェアを実際に実行して挙動を観察する手法です。実行中に外部サーバと通信する、ファイルを作成・改変するなど、リアルタイムの動きを確認します。
主な方法には以下があります。
●サンドボックス環境での実行と監視
●DAST(Dynamic Application Security Testing)ツールによる動的スキャン
●ネットワークトラフィックやシステムコールの監視
●プロセスモニタリングやファイルI/Oの監視

動的解析のメリット

●実際の環境で動作することで、外部通信や不正行為を直接確認可能
●難読化されたマルウェアでも、実行時の挙動を捉えられる
●ゼロデイ脆弱性を悪用する挙動(未知の不正動作)を発見するヒントとなる
●実行時の不正なAPI呼び出しやレジストリ操作の検知が可能

動的解析のデメリット

●実行環境に影響を与えるリスク(誤って本番環境で実行すると被害が出る)
●サンドボックス回避など、高度なマルウェアは検知をすり抜ける可能性
●分析結果が環境に依存するため、汎用的な結論を出しにくい (特定のサンドボックス環境ではマルウェアが“無害”に振る舞うケースがあるため)

両者の違いと使い分け

静的解析は、開発中のアプリケーションやソースコードレビューの段階で有効です。一方、動的解析は、実際に発生したインシデント対応や、実行時のリスク評価に向いています。
セキュリティ対策としては、両者を組み合わせた「ハイブリッド解析」が推奨されます。例えば、Webアプリケーション診断では、事前にSASTでソースコードを解析しつつ、DASTで動作中のアプリケーションの脆弱性をチェックする、といった使い方です。また、マルウェア解析においても、まず静的解析でコード構造を理解し、その後動的解析で不審な通信先や侵害活動を特定するのが一般的です。

企業にとってのポイント

サイバー攻撃は企業規模を問わず発生します。特に「人的リソース不足」「セキュリティ専任者が不在」といった課題が多く見られます。そのため、すべてを内製化するのは現実的ではなく、効率的な手法の選択が不可欠です。
まずは、外部のセキュリティサービス(MSS)や、クラウド型の動的解析ツールを活用し、社内リソースを補完することが現実的な選択肢となります。さらに、静的・動的の両方に対応した診断ツールやサービスを選定することで、コストパフォーマンスの高い対策が可能となります。
最低限の知識として、静的解析と動的解析の違いを理解しておくことが、セキュリティベンダーとの円滑な連携や、社内啓発にも役立つでしょう。
サイバーセキュリティのリスクは年々高度化しています。静的・動的双方のアプローチを適切に活用し、実践的な防御力を高めていくことが今後ますます重要となります。