本サイトは、快適にご利用いただくためにクッキー(Cookie)を使用しております。
Cookieの使用に同意いただける場合は「同意する」ボタンを押してください。
なお本サイトのCookie使用については、「個人情報保護方針」をご覧ください。
ファイルレス攻撃
ファイルレス攻撃とは
ファイルレス攻撃とは、マルウェアなどの不正ファイルをディスクに保存せず、メモリ上で直接悪意あるコードを実行するサイバー攻撃手法です。従来のアンチウイルス製品は、ディスク上のファイルをスキャンして不審なマルウェアを検知する設計が主流でしたが、ファイルレス攻撃はディスクにファイルを残さずメモリ上で活動するため、従来型のセキュリティ対策では検知が難しいとされています。
攻撃者は、PowerShell、WMI、cmd.exeなどのWindows標準ツールを悪用し、さらにWindows APIを通じてプロセスインジェクションなども行います。こうした正規ツールも利用するため、セキュリティシステムだけでなく管理者にも不正な活動が目立ちにくくなるのがファイルレス攻撃の大きな特徴です。
ファイルレス攻撃の仕組みと手口
ファイルレス攻撃の流れはおおむね次の通りです。
● フィッシングメール、RDPの悪用、USBメモリ、ドライブバイダウンロード(Web経由)などからネットワーク内に侵入する
●(フィッシングメールなどの場合)添付ファイル内のマクロやスクリプトが実行されるケースがある
● PowerShell、WMI、cmd.exeなどの正規ツールが呼び出され、メモリ上でコードが実行される
● 外部から不正コード(シェルコードなど)をダウンロードしてメモリ上に展開
● 必要に応じて、Windows APIを用いたプロセスインジェクション等で正規プロセスにコードを挿入し、検知を回避する
この一連の流れにより、攻撃者はディスク上にファイルを残さずメモリ上のみで活動を継続します。さらにexplorer.exeやsvchost.exeなどの信頼されやすいプロセスに潜伏するケースも多く、発見が遅れる要因となっています。
ファイルレス攻撃の目的と企業への影響
ファイルレス攻撃は、単なる侵入手法にとどまらず、企業の情報資産に対する重大なリスクを伴います。具体的には以下の目的で利用されることが多いです。
● ラテラルムーブメント(社内ネットワークでの感染拡大)
● 機密情報や認証情報(ID・パスワード等)の窃取
● ランサムウェアなどのマルウェア展開のための初期侵入手段
攻撃成功後、権限昇格や内部システムの横断的な侵害が行われると、情報漏えい、業務停止、ブランド毀損といった深刻なインシデントに発展します。
ファイルレス攻撃が検知されにくい理由
ファイルレス攻撃は以下の特徴により、一般的な対策では検知が難しいとされています。
● ディスクにマルウェアファイルを保存せず、メモリ上で活動するため、従来型アンチウイルスでは検出が困難
● PowerShellやWMIなど、通常業務でも使用される正規ツールを悪用するため、攻撃と通常操作の区別がつきにくい
● Windows APIを用いたプロセスインジェクションなどにより、正規プロセス内に潜伏し、痕跡をほぼ残さない
このため、インシデント発生後も長期間発見されない「ステルス攻撃」としての性質が強く、特にEDRやXDR未導入の組織はリスクが高まります。
ファイルレス攻撃への効果的な対策
ファイルレス攻撃に対する防御には、以下のような技術的および組織的な対策が有効です。
● EDR/XDRの導入:メモリ上の不審な挙動やPowerShellによる不正操作、プロセスインジェクションを検知
● PowerShellやWMIの制限:実行ポリシーの制御、監査ログの収集
● WindowsのASR(攻撃対象領域削減)機能の有効化:Officeからの不審な子プロセス起動のブロック等
● 特権アカウントの管理徹底:管理者権限の最小化とアクセス制御の強化
● 疑似フィッシング訓練を含む社内セキュリティ教育:フィッシングメール対策、ソーシャルエンジニアリング対策などの定期的なトレーニング
技術的な防御だけでなく、人的なリスク低減のための教育・訓練も不可欠です。
まとめ
ファイルレス攻撃は検知が難しく、大企業だけでなく中堅・中小企業にとっても現実的な脅威です。今すぐに取り組める対策から始め、EDR/XDRの導入や社内ポリシーの見直し、社員教育を段階的に進めることが重要です。未知の脅威に備え、技術と人の両面からセキュリティを強化する必要があります。